人事評価シートのテンプレート(Excel無料)|点数ごとに根拠を残す書き方
一般的な人事評価シートは評価項目・点数・評語・署名で構成され、評価が終わったあとに「なぜこの点数なのか」を説明しにくくなります。このテンプレートは項目ごとに点数の根拠を書く欄を設け、根拠のない項目は空欄のまま、残りの項目で換算点と評語を自動計算します。
この記事では、点数ごとに根拠を残す人事評価シートのテンプレートと、その書き方を紹介します。
一般的な評価シートとの違い
一般的な評価シートとこのテンプレートの違いは、根拠の扱いにあります。テンプレート配布サイトで手に入る評価シートの多くは、評価項目・点数・評語・署名の欄で構成されています。このテンプレートは、その骨組みに4つの工夫を加えました。業界で決まった標準があるわけではなく、もっとも多く使われている構成をもとに「あとから説明できる評価」になるよう手を入れたものです。
| 一般的な評価シート | このテンプレート | 変わること |
|---|---|---|
| 点数だけを書く | 項目ごとに根拠欄:いつ・何を・どこに残った記録か | 面談や異議申し立てで「なぜこの点数か」に答えられる |
| わからない項目にも3点 | 根拠がなければ点数を空欄にし、面談で確認 | 確認していないことが、確認済みのように見えない |
| 空欄があると合計がずれる | 空欄を除いた残りのウエイトで換算点と評語を自動計算 | 空欄があっても評語が出る |
| 情意評価を「積極性」などの形容詞で書く | 情意評価を観察できる行動で段階ごとに書く | 印象ではなく記録で点数をつけられる |
テンプレートには、空の評価シート、記入例、評語基準のシートが入っています。評価項目ごとに自己評価・一次評価・二次評価の欄を並べ、二次評価が入った項目はその点数で計算します。まず記入例を開くと、4つの工夫が実際にどう埋まるかがわかります。
点数ごとに根拠を書く理由
点数ごとに根拠を書く理由は、点数に評価される人よりも評価する人の傾向が強く表れるためです。管理職4,492名が育成目的の多面評価で上司・同僚・部下・本人から受けた評価を分析した研究があります。点数のばらつきの半分以上(2つのサンプルで62%と53%)は評価者固有の傾向によるもので、評価される人の仕事ぶりで説明できたのは21〜25%でした。※1
国内でも同じ課題が挙がっています。『日本の人事部 人事白書2025』では、評価・報酬制度の運用の課題として「評価者による基準や運用のばらつきがある」が67.7%で最多でした。「評価者のスキルが不足している」が51.0%で続きます。※2
根拠欄は、このばらつきを抑えるもっとも手軽な仕組みです。根拠を書こうとすると評価者は記憶ではなく記録を探すことになり、同じ行動に違う点数をつけた評価者は二次評価の段階ですぐにわかります。
評価結果を降格や解雇の判断に使う場合、根拠はさらに重要になります。労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を無効としています。降格や減給も、同法第3条第5項が定める権利の濫用に当たらないことが前提です。※3
根拠は次の3つを書けば十分です。
- いつ:日付や期間(例:9月12日、7〜9月期)
- 何を:観察した行動や結果(例:転換率の低下原因を期間で切り分けて特定)
- どこに:確認できる記録の場所(例:9月の振り返り資料、チームチャンネル、稟議記録)
| このようには書かない | このように書く |
|---|---|
| 課題解決力が高い | 9月の振り返り:3日の週だけ切り出して比較し、原因をクーポンではなくプッシュ通知の障害と特定(9/12 振り返り資料) |
| 責任感がある | 6月のスケジュール遅延を締め切り2日前に共有し、代替日程を提示(6/3 チームチャンネル) |
| 連携・調整に課題がある | 根拠不足:面談で確認 |
根拠をもとに評価コメントを文章で書くときの例文は、人事評価のコメント例文と書き方にまとめています。
根拠のない項目は空欄にする
根拠のない項目を空欄にするのは、根拠のない3点が「普通」ではなく「わからない」という意味だからです。3点で埋めると、評価シート上では確認済みの項目のように見え、誰も聞き直さなくなります。
テンプレートの記入例では「連携・調整力」の項目に根拠がないため、空欄にしています。残りの5項目で計算した換算点は3.71点(B)です。この項目に3点を入れると3.60点になり、数字の差は小さくても、その3点は誰も確かめていない点数です。空欄にした項目は「面談で確認すること」の欄に移ります。
情意評価は行動で段階を書く
情意評価は、評価区分のなかでもっとも主観が入りやすい区分です。形容詞ではなく、観察できる行動で段階を分けて書きます。次の表は「責任性」を4段階で書いた例です。
| 点数 | 記録にこのような行動がある |
|---|---|
| 5 | 担当外のリスクまで先に見つけて知らせ、解決策を提案している |
| 4 | 進捗を聞かれる前に伝え、遅れそうなときは前もって知らせている |
| 3 | 聞かれれば進捗を正確に答え、期限をおおむね守っている |
| 2 | 期限を過ぎることが続き、遅れてから知らせている |
このように書いておけば、「まじめそうに見える」という印象ではなく「遅延を2日前に知らせた」という記録で点数をつけられます。ほかの項目も、4点をつけるにはどんな行動が必要かを1文ずつ書いておくことが大切です。テンプレートの「基準」欄がその1文を書く場所です。
評価項目とウエイトの決め方
評価項目は、業績(何を成し遂げたか)・能力(どう仕事を進めたか)・情意(どんな姿勢で取り組んだか)の3つに分けるのが一般的です。等級が上がるほど業績の比重を高めます。
| 等級 | 業績 | 能力 | 情意 |
|---|---|---|---|
| メンバー層(若手) | 30% | 45% | 25% |
| 中堅・リーダー | 40% | 45% | 15% |
| 管理職 | 50% | 40% | 10% |
上の比率は出発点として使う例です。営業のように成果がすぐ数字に表れる職種は業績の比重を、研究開発のように成果が出るまで時間のかかる職種は能力の比重を高めます。
評語の段階と基準
評語の段階は、S・A・B・C・Dの5段階がもっとも多く使われています。評語ごとに点数の範囲だけでなく意味も書いておくと、評価者が同じ評語を同じ意味で使えます。
| 評語 | 換算点(5点満点) | 意味 |
|---|---|---|
| S | 4.5以上 | 期待を大きく上回り、その根拠が複数の項目に記録として残っている |
| A | 3.8〜4.5未満 | 期待を上回った。重点項目に4点以上の根拠がある |
| B | 3.0〜3.8未満 | 期待どおりの成果を出した |
| C | 2.2〜3.0未満 | 一部の項目が期待に届かなかった。次期の改善目標を一緒に決める |
| D | 2.2未満 | 複数の項目が期待を大きく下回った。改善計画と支援を記録に残す |
この表は絶対評価の例で、境界の点数は自社で決めます。評価者によるばらつきの抑え方は、評価者のばらつきを抑える方法にまとめています。
初めて評価制度をつくる会社が先にやること
テンプレートより先に、運用の順番を決めておくことが大切です。初めて導入するときに次の5つを守ると、初回の評価で混乱やトラブルが起きる恐れが小さくなります。
- 初回の評価は処遇と切り離し、試行として運用する。 評価者が基準と根拠の書き方に慣れるための期間です。
- 評価基準を評価期間の前に公開する。 何で評価されるかわからない評価は、結果を受け入れにくくなります。
- 評価項目は5〜6つから始める。 根拠をすべて埋められる数にします。
- 評価者が一人でも、別の人が一度確認する。 社長やほかの管理職が二次評価として根拠を読むだけでも、一人の傾向が出にくくなります。評価者が複数いる場合は、短い評価者研修(考課者訓練)で記入例をそろえておきます。
- 根拠は評価の時期にまとめてではなく、ふだんから集める。 月に一度、メンバーごとに1〜2行ずつ残しておけば、半年分を記憶で埋めずに済みます。
評価シートの記入手順
- 評価期間を決め、期初に目標設定面談を行う。 半期・年次など、自社のサイクルに合わせます。
- 期中に中間面談を一度はさむ。 根拠の集まり具合と目標の見直しを確認します。
- 期末に被評価者が先に自己評価を書く。 本人が覚えている根拠が、評価者の空欄を埋めます。
- 一次評価者が項目ごとに点数と根拠を書く。 根拠のない項目は空欄にします。
- 二次評価者が根拠を読み、評価調整会議で評語をそろえる。 同じ根拠に違う点数がついている箇所を調整します。
- フィードバック面談で、結果と「次期に期待すること」を伝える。 空欄にした項目はここで確認します。面談の流れと質問例は評価面談の進め方と状況別の質問例にまとめています。
担当者一人でExcel運用するときの課題
小さな会社では、人事担当者が一人で評価シートを配り、集め、評語をそろえる作業を担っています。テンプレートはExcelで十分ですが、評価の時期のたびに同じところでつまずきます。
- 根拠が記憶頼みになる。 半年分の仕事を評価の時期に思い出そうとすると、直近数週間の出来事しか残りません。
- 記録が散らばっている。 根拠がチャット、課題管理、ドキュメントに分かれていて、評価者も探すのに時間がかかります。
- 回収が手作業になる。 ファイルを集め、抜けている欄を依頼し直し、評価者ごとの点数を比べる作業に評価の時期の大半を使います。
人数が増えるほど、この作業は担当者一人では回らなくなります。根拠を探す手間を減らすことが、根拠欄を実際に埋めるための近道です。
CoSprint Peopleで根拠欄を埋める
CoSprint Peopleは、チームがすでに使っている業務ツール(チャット、課題管理、ドキュメント)とつながります。評価期間全体の記録を、自社の評価基準ごとに集めます。項目ごとに根拠となった箇所の抜粋(1行)と元の記録へのリンクがつき、根拠が見つからない項目は点数を空欄のまま、面談での確認事項に回します。
このテンプレートのルール(根拠欄、根拠がなければ空欄)をそのまま使い、根拠を探す時間だけを減らす仕組みです。評語と処遇の判断は評価者が行います。現場作業や外回りの営業のように、仕事の記録が業務ツールにほとんど残らない職種が中心の会社では、このテンプレートだけで運用するほうが合っています。
AIの導入を検討する段階になったら、人事評価へのAI導入 稟議書テンプレートも参考にしてください。
よくある質問
Q1. 人事考課と人事評価は違うものですか?
ほぼ同じ意味で使われています。人事考課は以前から使われてきた言い方で、最近は人事評価と呼ぶ会社が多くなっています。どちらの名前でも、評価シートの構成は変わりません。
Q2. 初めての評価をすぐ賞与や昇給に反映してもよいですか?
初回は処遇と切り離し、試行として運用することをおすすめします。評価者が基準と根拠の書き方に慣れる前の点数を処遇に使うと、評価シートよりも評価者の違いが結果を左右します。
Q3. 評価項目はいくつが適切ですか?
5〜8項目が扱いやすい数です。10項目を超えると評価者が根拠を埋めきれず、感覚で点数をつけることになります。3項目以下では、職種ごとに異なる期待を反映しにくくなります。
Q4. 根拠が書けない項目はどうしますか?
点数を空欄にして、面談で確認します。根拠のないまま「普通」の3点をつけると、その項目は評価ではなく評価者の印象になります。このテンプレートは空欄の項目を除き、残りのウエイトで換算点を計算します。
Q5. 評価結果を降格や解雇の判断に使ってもよいですか?
使うことはできます。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、降格や減給には就業規則などの根拠があり、人事権の濫用に当たらないことが前提です。不利益な処分の根拠にする前に、社会保険労務士や弁護士に確認してください。